2016年5月8日日曜日

ビットコインは価格操作が可能である


  • あらゆる資産の価値が連動する傾向の強い現在,なんとかショックで株も為替もなにも大荒れの時に,ビットコイン相場が微動だにしない様子は,本当に新鮮で純粋にびっくりする。

  • これは,分散投資を標榜する方にとってはうってつけの投資対象ではないだろうか。

  • そう考えて私は,資産のごく一部をビットコインに振り向けている。どれくらいかというと,NISA口座で金投資(金ETF)をしているので,それを超えないぐらいで。

  • ついでに言うと,その中のさらに一部でアルトコインも買ってみようと思い,去年の11月くらいに10万円分のビットコイン(2.0932BTC)で,イーサリアム(ETH),ビットシェアズ(BTS),リップル(XRP),モネロ(XMR)を,それぞれ2万5000円分(0.5233BTC)ずつ買ってみた。

  • そしてそれっきり,取引所に預けたまま放置していたのだが,つい最近になって,たまたまイーサリアムの日本円の評価額を見る機会があり25万円にもなっていて非常に驚いた。高騰しているとは聞いていたがこれほどとは。

  • 保有しているアルトコインの詳細は次の通り。


  • 通貨名取得価格数量現在価格評価額
    1ETH0.00240482217.600.020403194.4397
    2BTS0.0000091257390.380.000008580.4924
    3XRP0.0000122142842.770.000014170.6070
    4XMR0.00117652444.790.001877280.8349
    ※価格の単位はBTCで,現在価格は執筆時のもの。


  • とりあえず,本気で暗号通貨を普及させようと思ったら,小数点以下の桁数の多さは何とかした方がいいだろう。まあ利益は出ているけれど,利益確定しようにも手間がかかるし,税金やらなんやら考えることが多くて面倒なので,アルトコインは永久に放置しそうな気もする。

  • さて,投資の対象として暗号通貨と1年ほど真剣に向き合ってみた結果,非常に都合が悪いことに気が付いてしまった。それは,おそらく価格操作が可能だということ。

  • そのきっかけは,中国のビットコイン取引所の出来高に疑問をもったことだった。次の表は執筆時の時点で TradeBlock に表示されていた世界の主要取引所の24時間出来高をまとめたもの。


  • 取引所取引通貨24時間出来高全体に占める割合
    1BitstampUSD1,9060.11%
    2BitfinexUSD7,5690.43%
    3CoinbaseUSD3,4390.20%
    4itBitUSD1,5050.09%
    5OKCoinUSD6,6290.38%
    6GeminiUSD5570.03%
    7BTC-eUSD3,2650.19%
    8KrakenUSD2,1150.12%
    9BTCCCHY19,9441.13%
    10OKCoinCHY966,07954.78%
    11HuobiCHY750,39742.55%
    合計1,763,405
    ※出来高の単位はBTCで,データは執筆時のもの。


  • これを書いているのが日曜日であるため全体的に出来高が少ないが,Bitstamp,Coinbase など欧米の取引所の出来高がせいぜい1万BTCであるのに対し,中国の OKCoin,Huobi はなんとその100倍に近い100万BTC程度の出来高がある。

  • 同じく中国の BTCC も含めると,3取引所の出来高は全体の98.8パーセントにも達する。これはいくら何でもシェアが高すぎではないだろうか。いかに中国のビットコイン熱が高かろうとも,中国とそれ以外の国でこれほどの違いを合理化する理由はないように思う。

  • そうすると出来高の水増しを疑ってしかるべきではないか。私は上記の2取引所については出来高の9割が水増しであっても全くおかしくないような気がする。

  • もしも水増しが行われているならば,売り注文も買い注文も取引所が用意した自動売買プログラムに出させて自作自演をしているのではなかろうか。そうだとすれば,取引所の腹づもり一つでいくらでも価格操作ができるということだ。

  • 現に,かのマウントゴックスでは自動売買プログラムによる取引の水増しが行われていたらしい。ビットコインが高騰して注目を集めれば客が増えるわけだし,マージン取引をやっていれば価格を乱高下させてストップ狩りもできるので,取引所は価格操作の誘惑にかられるのでは。

  • ここまで圧倒的な出来高の差があると,他の取引所の利用者も中国の動向を見ながら取引せざるを得ないので,問題は特定の取引所の内部に限られずビットコイン相場全体に及ぶ。

  • 真偽のほどはともかく,ビットコインに価格操作の余地があることは間違いない。そうすると,ある日突然に取引所の不正が発覚して価格が急落なんてこともありえ,何を本当に信用していいのか分からず,ビットコインを本格的な投資対象とみることはできないのではないか。

  • なぜこんなことになってしまうのだろう。ビットコインに実需がないからだろうか,市場が未成熟だからだろうかなどと考えたりするがよく分からない。

  • ビットコイン取引所を金融庁の監督下におけばマウントゴックスの事件は防げたかもしれないが,国内で法整備をしても海外の取引所は規制できないし,まして分散取引所などが普通になったら国家による規制はますます困難だろう。

  • そもそも,暗号通貨を推進してきた方々にしてみたら,国家による規制がなければ不正を防止できないという事態は受け入れがたいのでは。

  • なんとなく,これは暗号通貨のもつ構造的な欠陥のような気がしてきた。私にはよく分からないので,経済と暗号通貨にお詳しい方に考えていただきたい。

2016年5月3日火曜日

リップルの送金コストはどれくらいか


  • ビットコインとは違ってリップルの仕組みは理解しずらいが,ネット上にある解説も奥歯にものが挟まったようで,理解が進まないのはそれも原因ではなかろうか。

  • リップルは,一言でいえば「暗号通貨を利用して銀行振込のような送金を実現するシステム」なんだと思う。

  • だから,「ゲートウェイ」とか「IOU」などと小難しい横文字を使わずに,単純に「銀行」とか「預金」などと言って説明したほうが分かりやすいんじゃないだろうか。

  • ちなみに,IOUは [ I owe you ] が語源だそうで「借用証書」と訳されているが,~証書などと言うから紙ベースのなにかを想像して意味不明になるのであって,ここでは単純に「債務」と訳すのが実態に即しているし,法律的にも正しいと思う。

  • 「債務」というのは借りる側から見た場合の言葉であって,同じものを貸す側から見た場合には「債権」になるから,「債権」と言い換えてもよい。むしろ,リップルを利用するユーザーは「貸す側」なので,「債権」と呼んだ方が分かりやすいだろう。

  • 銀行預金は,預金者から見れば「預金債権」,銀行から見れば「預金債務」であって,金銭を目的とする債権債務であるという意味でIOUと全く同じだから,IOUを「預金」と読み替えてもなんら差支えない。

  • リップルが目指しているのは,「預金と暗号通貨(XRP)を取引するマーケットを作ること」なんだと思う。

  • 例えば,A銀行からB銀行に送金をしようと思ったら,そのマーケットでまずA銀行の預金を売って暗号通貨を買い,さらにその暗号通貨を売ってB銀行の預金を買う。これによって,中央銀行やコルレス銀行を経由することなく銀行間の送金が実現する。

  • マーケットで取引されるのは,円預金に限る必要はなく外貨預金でもよいだろう。ならば,ビットコイン預金とかイーサリアム預金なんてものでもよいはずだ。

  • ところで,リップルは低コストの送金を実現するとされていて,特に海外送金の手段として有望だと思うのだが,その仕組みを考えるならば,マーケットの流動性の問題になったり,為替コストが発生するのではないかという疑問が当然に生ずる。

  • そこで,実際に送金をしてみて,どれくらいの送金コストがかかるのかを確かめてみることにした。

  • やってみたのは,M社という国内ゲートウェイからT社という国内ゲートウェイに3万円を送金することだが,これには次のような手順を踏んだ。


  • 1M社に3万円を入金する。
    2M社の口座で預金を暗号通貨に両替する。
    3両替した暗号通貨を,M社の口座からT社の口座に送金する。
    4T社の口座で暗号通貨を預金に両替する。
    5T社の口座から預金を払い戻す。


  • 実際に要したコストは次の通り。ただし,細かい端数は割愛している。

    1. M社に入金する時点で,入金手数料として108円(定額)が差し引かれ,2万9892円が入金された。

    2. M社で仮想通貨に両替する際に,取引手数料(0.2パーセント)として59円を差し引かれた。為替レート(XRP/JPY)は平均0.7218だったので,2万9892円を41330XRPに両替した。

    3. T社で預金に両替をする際には取引手数料は差し引かれなかった模様。為替レートは平均0.7080だったので,41330XRPを2万9262円に両替した。

    4. T社から出金をする際に,出金手数料656円(0.498パーセント+463円)が差し引かれ,2万8606円が出金された。

  • これら以外にも,両替や送金に際して0.012~0.015XRPのネットワーク手数料が発生しているが,1XRPは0.7円程度なので0円と評価して差し支えないだろう。

  • 戻ってきたお金が2万8606円だから,全体の送金コストは1394円で,うち823円がゲートウェイの手数料だから,571円が為替コストとなる。

  • 実際にやってみた感想だが,送金スピードは非常に速いのだけれど,為替レートがXRP/JPYとJPY/XRPで統一されていなかったり,指値注文しかできなかったりで使い勝手がよくない。

  • 流動性も低く,オーダーも数万円くらいがせいぜいなので,数十万円,数百万円を送金しようと思ったら,かなりの為替差損を被るだろう。

  • やはり,銀行が本格的に採用するようにならないと,リップルは送金手段としては使い物にならない。